概要

特定事業所加算は、訪問介護事業においてサービスの質が高いと評価される事業所に対して、その質を維持・向上させる目的で付加される加算制度です。この制度は、人材の質の確保やヘルパーの活動環境の整備などを行っている事業所に対して、サービスの質を積極的に評価することを目的としています。特定事業所加算にはⅠからⅤまでの区分があり、それぞれに異なる算定要件が設けられています。加算は、3%から最大20%の範囲で算定される可能性があります。

例えば、特定事業所加算Ⅰでは所定単位数の20%、特定事業所加算ⅡとⅢでは所定単位数の10%が加算されます。ただし、原則として特定事業所加算は併算定できませんが、加算Ⅲと加算Ⅴの組み合わせのみ併算定が許されています。

このような加算制度は、訪問介護事業所が高品質なサービスを提供し続けるためのインセンティブとなり、利用者にとってもより良いサービスを受けられる可能性を高めることに寄与しています。特定事業所加算を受けるためには、各加算に応じた明確な要件を満たし、必要な書類を提出する等の手続きが必要です。

特定事業所加算の要件概要

  • 個別研修の実施:年に1回以上個別の研修を実施。
  • 会議の定期的開催:概ね1ヶ月に1回以上、サービス提供に関する情報の伝達や留意事項の共有を目的とした会議を開催。
  • サービス提供ごとの指示・報告:サービス提供責任者は、サービス開始前に利用者の情報や留意事項を訪問介護員に伝達し、サービス提供後は報告を受ける​。
  • 定期健康診断の実施:訪問介護員等に対し、年に1回、事業主の費用負担で健康診断を行う。
  • 緊急時の対応方法を明示:事業所における緊急時の対応方法を記載した文書を利用者に説明・交付する​。
  • 有資格者の割合:介護福祉士が30%以上、または介護福祉士等が50%以上いること​。
  • サービス提供責任者の実務経験:実務経験3年以上の介護福祉士または実務経験5年以上の実務者研修修了者等を配置する。
  • 常勤サービス提供責任者の配置:人員基準を上回る数を配置する​。
  • 勤続年数7年以上の訪問介護員が30%以上を占める。
  • 重度利用者(要介護4以上等)の割合が20%以上​​。
  • 重度利用者(要介護3以上等)の割合が60%以上​。

以上の要件を満たすことで、訪問介護事業所は特定事業所加算の算定が可能となります。具体的にはⅠからⅤまであるので加算を取得するためにそれぞれの要件を確認しクリアしていくことが必要です。

算定要件 (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ) (Ⅳ) (Ⅴ)
1.訪問介護員等ごとの研修計画の作成、計画に基づく研修の実施
2.利用者に関する情報、サービス提供に当たっての留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催
3.利用者に関する情報等の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告
4.健康診断等の定期的な実施
5.緊急時等における対応方法の明示
6.サービス提供責任者ごとの研修計画の作成、計画に基づく研修の実施
7.訪問介護員等が以下のいずれかを満たす
●介護福祉士の占める割合が30%以上
●介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者の占める割合が50%以上

(※)
8.全てのサービス提供責任者が以下のいずれかを満たす
●3年以上の実務経験がある介護福祉士
●5年以上の実務経験がある実務者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者

(※)
9.常勤のサービス提供責任者を配置し、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置
10.訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の占める割合が30%以上
11.利用者のうち、要介護4以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が20%以上
12.利用者のうち、要介護3以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が60%以上

(※)7.または8.の要件のいずれかを満たすこと

これらの要件を満たすためには、事業所が体系的な研修計画を策定し、職員の研修参加を促進するなどの取り組みが考えられます。また、定期的な会議の開催や、緊急時対応計画の策定なども重要です。

特定事業所加算は経営に大きな影響を与えます。また、これらの要件を満たすことにより質の高いサービスに繋がっていくことでしょう。積極的に活用していきたいと思います。

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